ヨガの起源シリーズ31



【知識と智慧】




前回の『ヨガの起源シリーズ』は…




「三学(さんがく)」というものをみていきました。




「戒(かい)」という、真理に照らしたルールを守って生き→




囚われのない安定した心の状態である「定(じょう)」に入り→




真理をわきまえた思考と行動である「慧(え)」というものが生まれる。




というものが「三学」でした。




今回は、この「慧」、「智慧(ちえ)」とは何なのかということをみていきましょう。




先ず「智」という漢字の意味からみていくと…



1.

物事をよく知りわきまえている。

ものしり。

かしこい。



2.

頭のはたらき。

理解し判断する力。

ちえ。




このような意味があります。




孟子は「是非の心」として正邪(自然・不自然)を分別する心的作用であるとしています。




また、お釈迦様は「知らざるところなき」 つまり…知らないことはないとしています。

ただ、これは全知全能のことを言っているのではなく、真理を羅針盤として適切に答えに導けるということです。




答えそのものは知らなくとも、答えの見つけ方を知っているということでしょうか。








そして慧は…



1.

さとい。

気がきいて賢い。


2.

仏教で、真理を明らかに知る力。




といった意味があります。





こうしたことから判断すると…





●知恵は現実のさまざまな現象を識別する力。

これは、物事を識別するうえで、どんな人間でも偏見や感情などといったことが介入するのだということを知っており、その偏見や感情がどのように作用するのか分析的に理解して、真実をことのできる力と言えると思います。




●そして、それらを統合して理解する能力。

個別の物事の事象は、点でしかありません。しかしそうした点が積み重なり、深いレベルで観たときには一つの線でつながることがあります。これが統合であり、中庸ともいいます。仕事や学問、スポーツなどではなく、人生という…そして真理という本質的な点を集めて統合するととができる力でもあります。




●現実の感覚的なはたらきを超えて,全体を把握する超越的な意味も含んでいます。

目に見える物事、物質的なものにだけ囚われるのではなく、科学ではまだ解明されていない世界や力、法則といったものを把握する力です。




そうしたことから、仏教では「一切の事象や道理に対して的確な判断を下し心中の惑いを絶つはたらき」だとされています。




「一切の事象や道理に対して的確な判断」とは偏見や感情を分別して物事を観ることです。




そして「心中の惑い」というのも、結局は…心が定まっていないことであり、偏見や感情が介在していることに気が付かないときに起こるものです。




それらを「絶つ」ためには、頭で理解するだけでなく、実践という生き方の中で心身を養うことで身に付く力だといえると思います。





大乗仏教では「一切諸の智慧のうち最も第一となす」といわれています。




また西洋哲学史でも最も基本的な概念の一つだとされています。




キリスト教哲学ではプラトニズムの影響のもとに重要徳目の一つに入れています。




これだけ古今東西問わず、いたるところで重要視されているのが智慧であり、人生において大切なものは知識やテクニックではありません。




知識やテクニックに関しては…




ナザレのヨシュア(キリスト)



ゴーダマシッダールタ(お釈迦様)



孔丘(孔子)



ソクラテス




と偉大な人物よりも現代の中学生の方が様々な学問の知識は秀でています。




高校生、大学生などと比べると足元にも及ばないでしょう。




組織をつくることや、経営する能力は完全に現代のビジネスマンの方が上でしょう。




マーケティングのテクニックなどあるはずがありません。




それでも、偉大だとされているのは智慧が深淵だったからです。




知識やテクニックは、時代背景である価値観や文化、文明、科学などにより変化していきます。




せっかく手に入れた知識やテクニックは、時間とともに劣化していきます。




しかし、智慧というものはいつの時代も、地域関係なく人生にもっとも重要となる普遍のものです。




これから、科学文明が勢いを増してAIやロボットが加速度的に進化してゆく時代に突入していきます。




そのとき、知識やテクニックでは人間は完全に劣勢です。




存在意義が失われてしまうわけです。




そうであるならば、人間としての強みである智慧を益々しっかりと養ってゆくことが不可欠になるのではないでしょうか。




白川紘

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